グループ如意の部屋    僕らはオカルト研究部

1  僕らはオカルト研究部の世界

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1-1  プロローグ

君は春の柔らかな日差しを全身に受け、桜の咲く道を歩いて行く。今日から君は高校1年生、ここ私立第一木霊高校の生徒になるのだ。
入学式ではお偉いさんの長話を左耳から右耳に素通りさせて、テキトーに校歌や国歌を歌ったりする。なぜか「理事長」なる人物は用事のため欠席だったが、君にとっては長話が1つ減った分式が短く終わって好都合だったろう。
教室では新しいクラスメイトとそこそこに親交を深める。彼らはなかなか個性的で面白いやつらのようだ。尤も類は友を呼ぶそうだから、君も彼らから見れば個性的で面白いやつなのかもしれない。そんな中、能天気なメロディと共に放送がかかる。なんでも一部の新入生には別途連絡事項があるから保健室に向かわなくてはならないらしい。呼び出しを受けた数名の生徒の氏名には君の名も存在していた。
ぶつぶつと文句を言いつつ君は保健室に向かう。そこで君を待っていたのは、いかにもマッドサイエンティストといった姿の男性だ。ボサボサとした髪にはフケが積もり、着ている白衣には不気味な色のシミがついている。顔は不健康に青白く、瞳だけは爛々と輝いている。彼はしばらく君を根定めするように見つめていたが、すぐに楽しそうに口を開いた。

『くくくっ。ようこそ、木霊高校へ。私はここの理事長の代理の者だ。
さて、私もそれなりに忙しい身だ。単刀直入に訊こう。この学校では様々な部、サークルの活動が行われているのだが、君はどこに所属するつもりなのかな?「なぜそんな事を訊くのか?」といった顔だね。実は入学試験の際に君からは優れた素質が見出されていてね、是非とも参加して欲しい部があるのだよ。
そう、つまり、君にはオカルト研究部に入部してもらいたいんだ。可能性が見えるのだよ。未来の一流霊能者としての可能性が、ね。
なに、オカルト研究部を知らない?そうだね、それは無理もないことだ。なにせマイナーな部だし、彼らには秘密を守る義務もあるからね。それでは、私の権限で特別に彼らの書いたレポートのほんの一部を見せてあげよう。しかし、これは一体誰が作ったのかな?出来が悪いにもほどがある。
ん?心配はいらないよ。もう君はすでに逃げられないのだからね。』

そこまで言うと男の姿が突然消える。気が付くと君が入って来たドアは消滅し、密室となっている。部屋には数枚のレポート紙が落ちているだけだ。

1-2  オカルト研究部

オカルト研究部、通称オカ研は木霊高校で正式に活動許可されている部活である。主に理事長、部員、卒業生等のスカウトを中心に部員を確保している部であり、入学試験の際に適正を見られているという説もある。ただし、他の部・サークルとのかけもちや、転部、退部が認められていないわけではないし、自主的に入部を希望する生徒も稀に存在する。
人気のなさから基本的に一桁の部員で活動しており、廃部の危機を毎年向かえている。
表向きは、その名の通り、いわゆるオカルトについて研究、調査することを目的とした部である。文化祭等の学校行事ではそれらの実験や理論を解説している様子が見られる。
しかし、それはあくまで表の顔である。オカ研の実体は主に美影市や木霊高校で起きた怪事件の調査、解決することを目的としている霊能者の卵の集団である。その活動のほとんどにアヤカシ、もしくは霊能者が関わっていることが多いのは言うまでもない。また部員のほとんどが霊能者、もしくは特異な技能を有する者であるものの、混乱を避けるため周囲には表の顔を見せながら活動を行っている。
ところで、全国に存在するそれぞれの木霊高校に必ずオカルト研究部が存在しているわけではない。それは部顧問でもある理事長の機嫌に深く関係している。つまり、理事長の機嫌を損ねたオカルト研究部は即座に廃部になってしまうのだ。原因としては、オカ研の活動にむやみに一般人を巻き込んだ、活動の影響で学校に多大な被害をこうむった等が挙げられる。
不思議なのはオカ研の廃部とともに、全ての部員が姿をくらませてしまう事だ。ごく一部の例外はあるものの、部員達は木霊高校を退学し、その消息を追う事も困難となっている。

1-3  木霊高校

木霊高校は世界中に合計108の校舎を持つ私立高校である。それぞれの校舎は独立しており、第一木霊高校、第二木霊高校…第百八木霊高校と呼ばれる。ここでは特に岐阜県美影市に校舎を置く第一木霊高校について述べる。
第一木霊高校は創立100年を越え、学力よりも個人の特異な能力を重視する選考基準で入学試験が行われる普通科であることで有名な私立高校である。小さく、古めかしいながらも専用のグラウンドやプール、学生寮等の施設は充実しているため、在学生からの評判は悪くはない。
理事長と呼ばれる人物が主となって運営を行っていると噂されているが、実際のところは不明である。また生徒、教師の中で理事長の姿を見たものはほとんどいないため噂の真偽を確かめる術はない。
学校全体としては目立った成績を挙げていないが、一部の生徒が限られた分野で実力を発揮し評価を受けている。
また大規模な空襲や地震、火災などが起きてもなぜか校舎には傷一つないという出来事が起きており、世間からは不気味に思われることもしばしばある。

1-4  アヤカシ

アヤカシとは21世紀になってから多数確認されるようになった、人類の科学力を超越した生物を指す名詞である。ここで「多数確認されるようになった」とされてはいるが、実はアヤカシをアヤカシであると認識できる人間は決して多くはない。
それは混乱を避けるため政府機関が情報の流通を制限しているからであり、常識を超えた事柄は勘違いか、精神異常者の戯言だと決め付ける人間が多いからだ。したがってアヤカシという単語は上のような意味では浸透していない。またアヤカシが生物であるという定義の仕方も適切か否か判断が難しい事例もある。例えば死者が生前のように動き始めたり、無生物が突然意思を持って活動を始める場合である。これらがアヤカシに値するのか、またアヤカシの定義を変更する必要があるのか、など議論は絶えない。
以上の観点より我々オカ研が定義するアヤカシとは、一般に幽霊、妖怪、妖精等と呼ばれる科学では活動方法や目的を解析することのできない生物、もしくは生物のような存在を幅広く、曖昧に示す単語である。
現代になって姿を現したアヤカシは、その特殊な能力を用いて様々な事件を起こし始めた。しかしながら、発生した怪事件の数々はアヤカシの存在と同様に偶然の産物のように認識されている。
一方で一部の人間はアヤカシ達の存在に薄々感づいている。また世界中に残された民話や伝説等から、かつても世界中に彼らが存在していたと推測され、それぞれが人間と共存、敵対等の関係を築いていたと思われる。
どうして彼らが姿を消してしまったのか、どうして彼らが現代になって再び姿を現したのか等は調査中である。

1-5  霊力

霊力とは人間なら誰でも持っている精神力によって世界の法則を覆す力である。
古来から一部の者の間では信じられてきた魔法、呪術、法力、神通力等は名称や理論こそ違うものの全て霊力であると考えられている。ただし大抵の場合、人間一人が持つ霊力は微々たるものであり自分の意志で制御することは出来ない。さらに現代ではたとえ霊力によってなにか特殊な事象が起きたとしても、それは偶然の出来事やある種のトリックとして認識されるケースが多い。
しかし一部の人間に限り、ある程度の霊力を使いこなせる精神力と集中力を持っていることが発覚している。彼らは霊能者と呼ばれ、小数ながら全国に点々と存在している。
また霊力を操る霊能者もアヤカシも科学的に証明できない存在であるという共通点から、霊能者をアヤカシと同一視する場合もある。

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